定跡研究室 四間飛車編

3 後手、棒銀の攻め(その2) 2017.8.19

前回(その1)に引き続いて、後手が玉を舟囲いに囲ってから棒銀で攻めて来た場合の四間飛車の指し方を解説します。

【初手からの指し手】
  ▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛 △3四歩 ▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲7八銀 △4二玉 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △5二金右 ▲2八玉 △1四歩 ▲1六歩 △5四歩 ▲3八銀 △7四歩 ▲5八金左 △4二銀 ▲4六歩 △5三銀左 ▲5六歩 △7三銀 ▲4七金 △8四銀 ▲6五歩 (第1図)



第1図まで、長い手数を一気に進めましたが、前回(その1)と全く同じ手順なので、ここまでの手順の解説は割愛します。前回は、第1図から△7七角成と後手の方から角交換してくる指し方を解説しました。今回は、角交換を保留して単に△7五歩と突いてくる攻め方に対する、四間飛車側の反撃手段を解説していきます。△7五歩の意味としては、先手の左銀を7八に置いたままで攻めていく狙いです。


【第1図以下の指し手】
  △7五歩 ▲2二角成 △同 玉 ▲6七銀 △7六歩 (第2図)



後手が角交換して来ないのならと、先手の方から▲2二角成として角交換します。△2二玉の形は、玉が金銀から少し離れてしまった上に、何かのときに▲6六角とか▲7七角で王手○○取りを狙えますので、△2二玉の形にさせたことは四間飛車側にもメリットがあります。

さて、△7六歩と取り込まれた第2図。従来の定跡書(例えば「急戦!振り飛車破り@徹底棒銀」)では、以下の手順で居飛車(後手)有利と解説されています。(ただし、上記書籍では▲6七銀に代えて▲7七銀の形です。)


【第2図以下の指し手(1) 従来の定跡】
  ▲7六同銀 △3三角 ▲7七歩 △7三銀 ▲8八飛 △7四銀 (第3図)



△3三角の自陣角が好手で、第3図まで進むと、▲7七歩と打たされている形がつらい上に、▲8八飛も△8六歩を防ぐためやむを得ないとは言え、悪い形です。次に△7五歩▲6七銀△6五銀の狙いもあり、第3図は後手有利です。


【第2図以下の指し手(2) 筆者の新研究】
  ▲7八飛 △3三角 ▲7六飛 △7五歩 ▲7七飛 (第4図)



従来定跡の▲7六同銀に代えて、飛車を7筋に転換して(▲7八飛)、棒銀を迎え撃ちます。対して、@△7五銀には▲7六銀、A7二飛には▲6六角の王手銀取りで、いずれも先手有利となります。よって後手は、従来定跡と同様に△3三角の自陣角で対抗します。

先手は▲7六飛で歩を取った後、飛車成りを防ぐ△7五歩に対し▲7七飛で角の利いている場所に飛車を引くのが好手です(第4図)。▲7七飛に代えて、飛車を取られるのは嫌だと▲7八飛とすると△9九角成と香車を取られてしまい、後手優勢となります。四間飛車vs後手急戦の戦型においては、四間飛車の美濃囲いが飛車の打ち込みに強い形をしていますので、飛車を角で取られること(飛車角交換)を恐れる必要はありません


【第4図以下の指し手】
  △7七同角成 ▲同 桂 △6九飛 ▲5八銀 △9九飛成 ▲6六角 (第5図)



後手は△7七角成と飛車を取り、その飛車を△6九飛と打ち込んで攻めてきます。△6九飛は6七の銀取りになっていますので、銀取りを防ぎながら手順に銀を美濃囲いに引き付けます(▲5八銀)。△9九飛成で香車は取られてしまいましたが、▲6六角と自陣角を打つのが急所の一手です(第5図)。

前回(その1)の第5図も同じく▲6六角が四間飛車を有利に導く好手でしたが、今回も同じです。何度も出てきましたが、5五、6六、4六の3点は「黄金の三角地帯」で、好点の角となることが多いです。とりわけ、▲6六角は頻出ですので、覚えておきましょう。


【第5図以下の指し手】
  △4四銀 ▲4五歩 △3三銀 ▲3六歩 △7六歩 ▲3五歩 (第6図)

   

第5図では、王手を受けないといけませんが、△4四歩と受けるのは以下、▲6四歩(好手)、△同歩、▲6五桂(変化1図)の飛銀両取りがアクロバティックな一手で、先手優勢となります。

よって△4四銀と受けますが、▲4五歩、△3三銀と銀を追った後、じっと▲3六歩と突くのが好手です。後手は△7六歩と桂馬を取りに来ましたが、第6図の▲3五歩が急所の一手で(△同歩なら▲3四歩と打って銀が取れる)、先手優勢です。


以上で、後手が棒銀で攻めてきた場合の、四間飛車側の指し方を解説を終わります。今回解説した手順は、実は少数派であり実戦例が少ない指し方です。四間飛車側の棒銀対策として一般によく知られた形は、以下の2つの局面です(手順は省略します)。

  

変化2図の形は、40年前から指されている有名な定跡で、この定跡について解説した書籍は星の数ほどあります(若干オーバーな表現ですが)。
変化3図の形は、近年になってプロ間で頻繁に指されている定跡で、棒銀対策として最有力な陣形とされています。

ただ、変化2図、変化3図ともに、四間飛車側は当面受け身な指し方になってしまう上に、左の金が玉から離れていくため、初級者が指しこなすのは難しいのではないかと思いましたので、本譜のように▲6八飛型で▲6五歩とする、よりシンプルで攻撃的な指し方を解説させていただきました(変化2図の形は手順が複雑で、解説するのが大変というのが本音ではあります)。なお、ソフトの評価値的には、変化2図や変化3図の形が必ずしも今回解説した形に優るとは言えないようです。


棒銀対策を3回で済ませてしまい、プロの先生方に怒られそうですが、棒銀対策は終わりです。次回は、後手が「山田定跡」と呼ばれる急戦で攻めてきた場合の、四間飛車側の指し方を解説する予定です。

パナソニック将棋部ホームに戻る
inserted by FC2 system