定跡研究室 四間飛車編

7 角交換四間飛車の狙い筋 2017.9.9

前回までは、先手の四間飛車側が早めに▲6六歩と角道を止めて、角交換をしないでじっくりした駒組を目指す、いわゆる「ノーマル四間飛車」の指し方を、特に居飛車側が急戦で攻めてきた場合の対応方法について解説してきました。
居飛車側の持久戦作戦への対策に行く前に、今回は四間飛車側の方から積極的に角交換をする「角交換四間飛車」の指し方について、その狙い筋を解説します。

【初手からの指し手】
▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛 △3四歩 ▲4八玉 (途中図) △6二銀 ▲3八玉 △4二玉 ▲2二角成 (第1図)

  

途中図の▲4八玉では、前回までの「ノーマル四間飛車」のときは▲6六歩と角道を止めていました。「角交換四間飛車」は▲6六歩を突かないで駒組を進めます。

そして第1図で、四間飛車の方から角交換をします。手の損得で言えば一手損することになりますが、気にする必要はありません。
角を交換するタイミングについては、基本的にいつでも良いです。例えば途中図の▲4八玉に代えて▲2二角成としても、問題はありません。ただ、あまり遅くなると、居飛車側に角道を止められて角交換し損ねる可能性が生じますので、早めに交換するのが良いでしょう。


【第1図以下の指し手】
△同 銀 ▲8八銀 △3二玉 ▲7七銀 △5二金右 (途中図) ▲2八玉 △1四歩 ▲1六歩 △3三銀 ▲3八銀 (第2図)

  

第1図から第2図に至るまで、四間飛車側の駒組はシンプルで分かりやすいと思います。
角交換後、まず左側の銀を7七の位置まで移動させます(途中図まで)。その後、未完成だった玉の囲いを美濃囲いにします(第2図)。

一方、居飛車側は、ノーマルな舟囲いの形です。角を交換しているので、居飛車穴熊には組みにくくなっているのがポイントの1つです。居飛車穴熊に組んでしまうと、駒が玉周辺の右辺に偏るため、左辺(6筋から9筋)に角の打ち込みの隙が生じやすいため、というのが理由の一つです。もう一つの理由は、居飛車穴熊に組むまで手数がかかるため、四間飛車側から早い動きで先攻されると、囲う余裕がないのです。


【第2図以下の指し手 (1)】
△8五歩 ▲8八飛 △6四歩 ▲8六歩 (途中1図) △同 歩 ▲同 銀 △6三銀 ▲8五銀 (途中2図) △2二玉 ▲8四銀 △3二金 ▲8三銀成 △6二飛 ▲8二歩 (第3図)

  

四間飛車側は、飛車を8筋に振り直したあと(=向かい飛車)、▲8六歩と突いて8筋を逆襲します。(途中1図)

△8六同歩に▲同飛と取る手も考えられますが、この場合は飛車ではなく銀で取り、8筋を棒銀で逆襲する手を狙う方が良いでしょう。まさに棒銀の要領で、8筋をどんどん逆襲していきます。(途中2図)

そして、▲8三銀成と成り込んで8筋の突破に成功した後、▲8二歩と攻めて、駒得が確実となりました。(第3図)
第3図は先手が大いに優勢です。

実は、居飛車側に受けを上手く対応されると、なかなか本譜のように攻めが成功することは難しいのですが、級位者同士の対戦では本譜のように綺麗に攻めが決まることが多いだろうと思います。何より、攻めがシンプルで方針が分かりやすいのが、この戦法のメリットです。


【第2図以下の指し手 (2)】
△2二玉 ▲8八飛 △3二金 ▲8六歩 △6四歩 ▲6六銀 (途中1図) △6三銀 ▲7七桂 △4四歩 ▲5八金左 △4五歩 ▲8五歩 (途中2図) △同 歩 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 桂 △8九飛 ▲8二飛 (第4図)

   

次に、第2図以下の変化で、居飛車側が△8五歩と突くのを保留した場合の指し方を解説します。

この場合も同様に、▲8八飛と向かい飛車に振った後、▲8六歩と突いて行きます。この形では棒銀はやりにくいので、▲6六銀と中央に活用します。(途中1図)

そして、▲7七桂と左桂を活用します。四間飛車側にとって、左の桂馬が活用出来るのは、大きなメリットになります。この後、飛車交換を狙っていくのですが、その前に▲5八金左として本美濃囲いを完成して、離れ駒をなくしておくのが大きな一手です。そして満を持して▲8五歩と仕掛けます。(途中2図)

飛車交換をした後、お互いに敵陣に飛車を打ち込みます。(第4図)

先手は8一の桂馬と9一の香車の両方が取れそうなのに対して、後手は9九の香車は取れそうですが8五の桂馬を取るのは難しそうで、下手をすると▲7三桂成と成り込まれて6三の銀と交換になる可能性すらありそうです。よって第4図の形勢は、先手が有利です。


今回は角交換四間飛車の狙い筋を解説しました。角道を止めるノーマル四間飛車よりも、指し方がシンプルで分かりやすい上に、四間飛車の方から仕掛けて攻めていくことが可能で、主導権を握りやすい戦法です。
居飛車側に正しく受けられると、本譜のようにあっさりと優勢にすることは難しいのですが、アマチュア、特に級位者同士の対戦においては、一度試していただくのも面白いと思います。


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