脊尾詰ダウンロード 将棋所対応版

今週の詰み筋 (連載 Vol.6) 2017.5.28

今回取り上げるのは、本日(2017年5月28日)放映された第67回NHK杯トーナメント1回戦第9局宮田敦史六段vs久保利明王将戦です。

NHK杯、私も毎週欠かさず見ています。ただ、漫然と見ていると眠くなってきますので、パソコンソフトで検討しながら見ています。
ソフトで検討しながら見ると、眠気防止以外にも、@棋譜が残りあとですぐ見直せる、Aソフトの形勢判断が分かる、Bソフトの候補手が分かる、などのメリットがあり、プロ棋士の解説と合わせて参考にすると勉強になります。

△久保王将の中飛車で始まり、▲宮田六段が角交換から4六銀で5筋を受けた後、駒組み合戦となり迎えた第1図。



第1図以下、実戦の進行は、
 △9二香、▲8六歩、△9一飛、▲8七金、△3二金   (第2図)

△久保王将は、飛車を9筋に転換して、左桂を跳ねて弱体化した先手陣の端に狙いを付けましたが、
悪形に構わず▲8七金と受けられてみると、それ以上は手を出せず、局面は膠着状態になりました。



第1図では△4二角と自陣に角を打つ手が有力で、盤上この一手とも言うべき好手だったと思います。(→参考1図)
△4二角の意味としては、まず角の利きで▲8六歩を突かせないようにした後、△9二香から△9一飛で端に飛角香の集中砲火を浴びせようということです。その構想が実現すると、端に玉と香しか利いていない先手陣はひとたまりもありません。



この△4二角、解説の渡辺竜王も触れられませんでしたが、2007年に現役のまま亡くなられた真部一男九段が絶局となった豊島戦で幻の一手となり、その後升田幸三賞を受賞した、有名な一手です。(→参考2図)



参考2図の局面で、△真部一男当時八段は、「角を打てば俺の方が優勢だ」と思いつつも、「その手を指せば相手が長考に入り次の自分の手番まで体が持たないだろう」として、幻の妙手△4二角を指さずに参考2図の局面で投了を告げました。
このあたりの経緯については、日本将棋連盟のコラムをはじめ、いろんなサイトで紹介されていますので、ご覧ください。

久保王将もこの△4二角については十分にご存じであったと思います。
承知の上で何か嫌な手が見えて断念したのか、それとも単純にうっかりされたのか、機会があれば伺ってみたいところです。


局面は進み、迎えた第3図。



振り飛車側は銀冠の堅陣に対し居飛車側はポンコツ囲いで、こうした局面では通常は、多少駒損でも
捌き合いになれば振り飛車側の勝ち、としたものですが、後手陣には致命的な欠陥が1つありました。
それが第3図の▲9一角で、序盤に△9二香と上がった手を見事に咎められてしまいました。
第3図の数手後に、強烈な▲7三角成の寄せが実現し、先手勝勢となりました。



問題図は、△久保王将が自陣に龍を引き付けて粘りを見せた局面です。
詰将棋の名手で知られる▲宮田六段、受けなしと思っていたところで、読んでいない手を指されて秒読みの中、
慌て気味に▲3四桂と打ちましたが、以下の手順で詰みがありました。

▲6三金(53)、△同 金(72) 、▲6二銀打、△同 龍(22)、▲同 龍(61)、△同 金(63)、▲同 角成(71) 、△同 玉(73)、
▲5四桂打、△5三玉(62) 、▲5二金打、△4三玉(53)、▲4二金(52)、△3三玉(43)、▲3四飛打 、△2三玉(33)、
▲3二飛成(34)、△2四玉(23) 、▲3四龍(32) まで19手詰
   (SeoTsume1.2 探索局面数124159  思考時間0秒)



▲宮田六段、即詰みは逃しましたが、局面が大差であったため大事には至らず、そのまま勝ち切りました。

そう言えば先週のNHK杯では、▲塚田泰明九段が優勢な将棋で即詰みを逃した(93手目の局面)末に、逆転負けを喫してしまいました。
こちらは、悔やみきれない敗戦であったことでしょう。


脊尾詰ダウンロードホームに戻る
パナソニック将棋部ホームに戻る
inserted by FC2 system