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今週の詰み筋 (連載 Vol.11) 2017.8.5

今回は7月30日に行われた第28回社会人リーグ2日目の対局の中から、パナソニック将棋部の渡辺さんの熱戦譜を紹介します。

東京アマチュア連盟主催の社会人リーグには、2年前の第26回大会から参加しています。チーム名は「日立」で、日立製作所の将棋部とパナソニックの将棋部とで、合同でチームを組んでいます。今年のリーグは上から2つ目の「2部リーグ赤」に所属していますが、チーム成績は1日目は4連敗、2日目も4連敗で、通算0勝8敗の最下位と、降級の危機に直面しています。日立かパナソニックに少しでもご縁のある強豪の方、3日目以降ぜひ一緒に参加していただいて、チームを救っていただけたらと思います。

今回紹介する将棋は、リーグ6回戦の蒲田将棋クラブとの対戦で、パナソニック渡辺さんの対戦相手は元奨励会の強豪だそうです。渡辺さんは職域団体戦では高勝率を残しているパナソニックのポイントゲッターですが、社会人リーグでは何故か精彩を欠き、あまり勝てていません(勝率5割程度)。三間飛車を得意とし、中田功七段の「コーヤン流」をお手本としているようです。また、渡辺さんはパナソニック将棋部の実質的なオーナーであり、大半のページは彼が更新しています。脊尾詰の公開も彼がいなければ、なかったかもしれません。



▲渡辺さん得意の三間飛車に対し、△相手の方は居飛車穴熊の堅陣に。相穴熊にしたり急戦にはせず、銀冠を目指すのが渡辺流です。長い駒組みを経て、第1図から戦いが始まりました。

第1図以下、実戦の進行は、
  △7四歩 ▲4七銀 △8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲同 飛 △8六飛 ▲4五桂 △4四角 ▲7三飛成 (第2図)



△7四歩から△8六歩が、穴熊の堅陣を生かした仕掛けです。△7四歩を▲同歩と取ってしまうと、△8六歩▲同歩△7五歩で飛車の捌きを狙われて、先手の飛車先だけが重くなってしまいますので、▲4七銀と離れ駒をなくして陣形を引き締めました。第2図でお互いに飛車が成り込める形となりましたが、こうなると金銀4枚の鉄壁の穴熊に囲った後手のペースと言えるでしょう。

第2図以下、実戦の進行は、
  △7二歩 ▲6三龍 △4二金寄 ▲2四歩 △8八飛成 ▲6一龍 (第3図)



後手は、△7二歩から△4二金寄として、▲5三桂成を受けましたが、これが良くなかったようです。△7二歩に代えて第2図では、
  △8九飛成 ▲5三桂成 △同 角 ▲同 龍 △4五歩 ▲同 金 △3三桂打 (参考図)



参考図のように、角と桂馬を交換して攻め合うのが居飛車穴熊らしい指し方で、有力でした。我々の通常の感覚からすると、桂馬よりも角のほうがはるかに価値が高い駒に思えますが、穴熊戦においては玉の囲いの側の桂香は非常に価値が高い駒である上に、穴熊側の角は捨てるためにあるようなものですので、この場合の角桂交換は恐れる必要がないわけです。また、美濃囲いを上部から攻略する場合に、角より桂馬の方が役に立つ場合があります。

また、受けるのであれば、△7二歩を打たずに単に△4二金寄とする方が優ります。それならば、第3図のようにダイレクトに龍を一段目に入られる手がありませんでした(7一には角が利いているため)。

さて、第3図のように▲2四歩と突くだけ突いてすぐに▲2三歩成と清算しないのが、当然ながら上手い指し方です。2筋の歩をすぐに切ってしまうと、△2六歩の反撃が厳しく残ってしまいます。

局面は20手ほど進んで、第4図になりました。先手は玉頭方面に戦力を集中して、厚みを築きました。後手玉を横から攻めてもビクともしないので、このように縦方向から穴熊を攻略するのが良い着想です。



第4図以下、実戦の進行は、
  ▲1三歩 △同 桂 ▲2四桂 △2五香 ▲同 銀 △同 桂 (第5図)



▲1三歩は穴熊攻略の好手筋ですが、本局の場合は指し過ぎでした。なぜなら、第5図のように桂馬を上手く活用されて、先手玉が急に危険な状態になってしまったからです。▲1三歩では、単に▲2四桂とした方が良かったです。第5図では、次に△3七銀と打たれては寄り筋となってしまうので、▲渡辺さんは慌てたのではないでしょうか。

第5図以下、実戦の進行は、
  ▲3六金 △7七龍 ▲2五金 △5七龍 ▲1二桂成 △同 玉 ▲2四桂 (第6図)



先手はじっと▲3六金と寄って耐え、△7七龍の角取りに構わずに▲2五金と出て、玉頭を制圧しました。このあたり、▲渡辺さんのほとばしる気迫が感じられます。それに対し、後手も冷静に対応して、優位を保って迎えた第7図。



第7図以下、実戦の進行は、
  △2七歩 ▲同 玉 △2六歩 ▲1六玉 (図面省略)

渡辺さんの気迫に押されたわけではないでしょうが、△2七歩から△2六歩は玉を上部に逃がして寄せにくくしてしまいました。第7図では、△4六桂と打っておけば、先手玉は一手一手の寄りで、また後手玉に即詰みはなく、後手の勝ち筋でした。



第8図以下は、容易な即詰みです。ちょっと簡単すぎたので、詰手順は割愛します。

本局は、お互いの持ち味を発揮した、ハイレベルな熱戦だったと思います。

日立渡辺vs蒲田戦の棋譜

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