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今週の詰み筋 (連載 Vol.16) 2017.12.30

今回は12月26日に行われた第59期王位戦予選 村山慈明七段vs糸谷哲郎八段戦をご紹介します。

勝った方がリーグ入りを懸けた予選の決勝に進む対戦です。角換わり模様の出だしから、先手の村山七段が11手目▲6六歩と角道を止めて、流行の雁木に囲いました。対する後手の糸谷八段は、角道を開けたまま腰掛銀から右四間飛車にして、△6五歩の仕掛けを含みに駒組みを進めました 。



第1図は、後手が△4四歩と角道を止めた局面です。△6五歩の仕掛けを見送り、じっくり指す方針です。後手から仕掛ける場合は一段金(5一金)の形にして、飛車を捨てて攻めたときの相手の反撃に備える形が多いですが、本局では△5二金型にしましたので、△4四歩から受けに回るのは予定の作戦だったと思われます。

第1図以下、実戦の進行は、
▲4五歩 △4三銀上 ▲4四歩 △同 銀 ▲2四歩 (途中図) △同 歩 ▲2五歩 △4一飛 ▲2四歩 △2二歩 (第2図)

 

第1図から▲4五歩の仕掛けに対し平凡に△同歩と取るのは、3五歩、4三銀上、4五桂、4四角、2四歩、同歩、3四歩で、いつもで▲6五歩の狙いがあり、先手ペースです。

本譜は取らずに△4三銀上としましたが、4筋を取り込んだ後の▲2四歩(途中図)が手筋の攻めです。対して△2四同角と取る手も考えられましたが、以下、▲6五歩に対する受け方が難しいと判断したのでしょうか、本譜は△同歩と取りましたが、▲2五歩の継ぎ歩が厳しい攻めでした。

▲2五歩に対し、△同歩と取るのは、同桂、2四角、6五歩で、先手の調子が良いので、本譜は△4一飛と4筋からの反撃を狙いましたが、第2図まで△2二歩と受ける形となっては、後手が苦しい形勢です。


局面は進んで第3図。先手の村山七段が快調に攻めを続けています。後手は4五の桂馬を取り切って、あわよくば4筋からの飛車の成り込みを実現させたいところです。



第3図以下、実戦の進行は、
△9五歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲4四歩 △9五香 ▲8二角 △6二角 (第4図)

 

第3図から、1三桂、1五飛、1四歩、同飛、4五銀とすれば、強引に4五の桂馬を取ることは可能ですが、以下、同銀、同飛、1五飛と飛車交換を迫られて、玉形の差が大きく先手優勢です。4六銀が飛車の侵入を邪魔して重い形なのが、後手にとって痛いところです。

先手玉が鉄壁のままでは勝ち目がないと見た後手は、第3図以下、△9五歩から端に嫌味を付けました。△9七歩に同香と取れば8五桂で、先手も気持ちの悪い形になります。

途中図の▲4四歩は、4一飛の利きを止めながら、△4四角の王手を防いだ手(=敵の打ちたいところへ打て)です。もし△4四同飛と取れば、6六角または8二角で、どちらでも先手良しです。

第4図の△6二角は、7三の桂取りを受けただけの手で、非常に辛いところです。代えて△6二金と受けるのが形ですが、以下、7三角成、同金、5三桂成と進むと、2筋の壁が痛く、次に先手から2三桂の狙いもあり、後手がいけません。また、△6二角に代えて△8五桂と軽くかわすのは▲6四角成が絶品で、5三の地点を狙いつつ4六の銀取りにもなっています。


局面は進んで、第5図。△3三桂で飛車と銀の両取りになっていますが、もし飛車を逃げるようでは、後手にも楽しみが出てきます。



第5図以下、実戦の進行は、
▲9五香 (途中図) △9六桂 ▲9八玉 △9七歩 ▲同 桂 △2五桂 ▲6三歩成 (第6図)

 

両取りを逃げないで▲9五香としたのが好判断で、玉形の堅さを維持することが出来ました。第6図まで、2五の飛車は取られましたが、▲6三歩成が厳しく(同金なら5二銀が両取り)先手勝勢です。


さて、局面は大詰めとなり、問題図です。先手玉に詰めろ(受けなし)がかかり、後手玉に即詰みがなければ逆転です。盤上の手掛かりが3四の銀一枚で、一見詰みにくそうに見えますが、どうでしょうか。



【問題図からの詰め手順】
▲4四飛 △4三香 ▲5二金 △同 玉 ▲6四桂 △4一玉 ▲4三飛成 △同 金 ▲5二銀 △3一玉 ▲3二金 △同 玉 ▲4三銀左成 △2一玉 ▲3二金 △1二玉 ▲1五香 △1三飛 ▲2二金 △同 玉 ▲1三香成 △同 玉 ▲2三歩成 △1四玉 ▲1六香 △1五歩 ▲2四飛 まで27手詰
  (SeoTsume1.2 探索局面1334072  思考時間4秒)



初手▲4四飛と中空に打って、上から押さえるための足掛かりを作るのが好手でした。


本局は第1図の仕掛けでペースを掴んで快調に攻めを続けた村山七段の快勝譜でした。次戦は王位リーグ入りをかけて都成四段と対戦します。

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