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今週の詰み筋 (連載 Vol.28) 2018.9.25

今回は、9月25日に行われた第49期新人王戦トーナメント青嶋未来五段vs 藤井聡太七段をご紹介します。

本局はトーナメントの準決勝で、勝った方が決勝3番勝負に進出となります。藤井七段にとっては、参加資格の関係上(六段以下)、今期が最後の新人王戦です。

戦型は、矢倉模様のスタートでしたが、先手の青嶋五段が右玉に変化しました。後手の藤井七段はオーソドックスな矢倉囲いで対抗しました(第1図)

第1図まで、後手は自然な指し手で対応していますが、早めに8筋の歩を交換しておいたのが、何気ないようですがポイントでした。最近は、飛車先の歩交換を保留する指し方も多いですが、8筋で一歩を入手しておいたことが、この後で生きてきます。



第1図以下、実戦の進行は、
▲5五歩 △同 歩 ▲同 銀 △同 銀 ▲同 角 △5六歩 (途中図) ▲同 銀 △5二飛 ▲5七歩 △3五歩(第2図)

 

第1図の局面で、先手の駒組みは飽和状態でこれ以上手をかけても陣形は良くならないのに対して、後手は7四歩、9四歩、2二玉など、指したい手が多くあります。よって、先手は▲5五歩から銀交換の仕掛けを決行しました。

途中図の△5六歩が、新手筋と言うと大袈裟ですが、このタイミングで垂らすのは割と珍しい手筋だったと思います。一見すると、銀で取られて何でもないように見えますが、▲同銀に対して△5二飛とまわるのが絶好の一手です。次に△6四銀を狙われ、銀にひもを付けるためとは言え、交換したばかりの歩を▲5七歩と打つようでは、先手はつらいところです。

続いて、△3五歩と右玉の弱点である桂頭を攻めて、後手の攻めが続く形になりました(第2図)。▲同歩には△3六歩を見ていて、ここに至って8筋の歩交換で得た1歩が生きることになり、後手の藤井七段が優勢です。


局面は進んで、第3図。苦戦を意識した先手の青嶋五段が、「不利なときは戦線拡大」ということで、端を攻めたところです。



第3図以下、実戦の進行は、
△5四銀 ▲3六金 △1三香 ▲1二歩 △2二銀 (途中図) ▲5五銀打 △1六歩 ▲4四銀 △1七歩成 (第4図)

 

第3図の▲1三歩は手筋の一手で、△同香に▲1二歩の攻めを見ています。後手はまず、△5四銀と投資し、中央を制圧しにかかりました。△5四銀は▲5五歩と打てないことを見越していて、間接的に▲5七歩の一手を咎めています。

次に△5五歩と打たれると銀が死んでしまうため、銀の逃げ道を空けますが(▲3六金)、そうしておいてから冷静に1筋に手を戻しました(△1三香から△2二銀)。途中図では▲4五歩と突きたいところですが、それは△5五歩と打たれてしまって攻めにならないため、先手は▲5五銀打と厚みを加えました。

▲5五銀打に対し、△1六歩とじっと歩を伸ばしたのが、堂々とした一手でした。この手は銀の入手を見越していて、△1七歩成から△2八銀の王手飛車取りを狙っています。また、いつでも△1五角と王手で飛び出す含みもあります。


局面は進んで、第5図。駒得を拡大した藤井七段が勝勢の局面で、あとはどう決めるか、といったところです。



第4図以下、実戦の進行は、
△5六飛 ▲同 歩 △6五桂 ▲同 歩 △6六桂 ▲5七玉 △7八桂成 ▲3四桂 (問題図)

ばっさりと飛車を切ってから、歩の頭に桂馬を打ったのが、流石の切れ味でした。やむを得ない▲6五同歩に対して、△6六桂の王手金取りが決まりました。▲3四桂は、△7五角が見えているところですが、形作りです。


さて、問題図。先手玉はまだ広く、3六に馬がいて、小駒だけの持ち駒では即詰みはまだなさそうに見えますが。



【問題図からの詰め手順】
△7五角 ▲6六桂 △4八銀 ▲同 玉 △6六角 ▲4七玉 △4八金 ▲3七玉 △3八金 ▲2六玉 △4八角不成 ▲3七金 △2七金 ▲1六玉 △1五歩 ▲同 玉 △1三香 (途中図)
▲1四銀 △同 香 ▲同 玉 △1三銀 ▲1五玉 △3七角成 ▲同 馬 △1四銀打 ▲1六玉 △1七金打  まで27手詰
  (SeoTsume1.2 探索局面110972  思考時間0秒)

 

△7五角の王手に対し、何を合駒しても、△4八銀の捨て駒で下段に落とすのが決め手になります。△6六角となってみると、先手玉が意外に狭いのが分かります。実戦では▲6六香と合駒しましたが、上記と同様の手順で詰みとなりました。


本局は、先手の5筋交換を咎めて優位に立った藤井七段が、落ち着いた指し回しを見せ、最後は△5六飛切りから素早い寄せを披露して快勝となりました。勝った藤井七段は決勝進出となり、出口三段との決勝三番勝負に挑みます。

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