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今週の詰み筋 (連載 Vol.29) 2018.10.13

今回は、10月4日に行われた第68期王将戦挑戦者決定リーグ渡辺明棋王 vs 佐藤天彦名人をご紹介します。

久保王将への挑戦権をかけて7人で戦う王将リーグは、渡辺棋王はここまで0勝1敗。佐藤名人は、この対局がリーグ戦の初戦となります。

第1図は、角換わり腰掛銀の流行形。先手の渡辺棋王が玉を8八に入城したのに対し、後手の佐藤名人は玉を4二と5二の間で行き来して、手待ちを繰り返しました。



第1図以下、実戦の進行は、
▲4五桂 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2九飛 (途中図) △6五歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲6九飛 (第2図)

 

玉を8八に囲って機は熟したとして、仕掛けを敢行しました。▲4五桂の前に3筋の歩を突き捨てるかどうかは微妙なところですが、単騎跳ねの方が勝るとの判断でした。▲4五桂の他には、▲4五歩と位を取ってから、▲4六角と自陣角を打っておく手も考えられるところです。

▲4五桂に対し、△2二銀と引いて次に△4四歩と桂馬を取りに来る手も考えられますが、それに対しては▲2四歩で2筋の歩を交換した後、▲7五歩の桂頭攻めや▲5三桂成と捨てて玉形を乱す手段があって、△2二銀は指しきれないということで、本譜は△4四銀でした。

▲2九飛まで(途中図)の局面で、次に先手からは▲7五歩の桂頭攻めの他に、▲2五角という異筋の角打ちの狙い(次に3四角から2三角成)があります。▲2五角は大変打ちにくい角ですが、この戦型ではよく出て来る手筋の角打ちです。

じっとしていると先手が良くなるということで、後手は△6五歩から反撃に転じました。△7五歩に対し▲同歩と取るのは、△6五桂と跳ねられて銀の逃げ場所がありません。▲6九飛と反撃含みに△6五桂を防いだのが第2図です。


局面は進んで、第3図。先手の玉形を乱しながら、飛車先の歩を交換した局面です。



第3図以下、実戦の進行は、
△6八歩 ▲2九飛 △6九角 ▲6四歩 △7四歩 ▲5八角 (途中図) △9五歩 ▲同 歩 △4五銀 ▲同 歩 △6五銀 (第4図)

 

攻守ところを代えて、後手の必死の攻めを先手が全力で受け止める、という展開となっています。第3図で、後手から攻めの継続が難しそうに思える局面ですが、△6八歩が軽手でした。▲同飛と取られて何でもなさそうに見えますが、それには△5九角、▲5八飛、△8六角成、▲同金、△同飛、▲8七銀、△6六飛で後手優勢となります。

△6九角と打ち込んだ手に対して、▲7四歩と桂馬を取りに行くのは、△6五桂、▲同銀右、△同銀、▲同銀、△8五歩の攻めが厳しく、これも後手優勢になります。

途中図の▲5八角は難しい手ですが、遊んでいる4八の金を玉の守りに近づける狙いです。後手は9筋を突き捨てた後、4五の桂馬を食いちぎってから△6五銀とぶつけて行きました。激しく先手玉に迫っていますが、後手玉があまり堅くないのと、6四に垂れている歩も大きく、先手がうまく受ければ後手の攻めを余せそうな局面です。


局面は進んで、第5図。△9五香と、端の香車を捨てた手に対して、▲同香と応じた局面です。



第5図以下、実戦の進行は、
△9八銀 ▲7五銀 △8七銀成 ▲同 銀 △7五歩 ▲5五桂 (途中図) △9九銀 ▲同 玉 △8七角成 (第6図)

 

△9八銀と厳しく迫りましたが、先手は▲7五銀と急所の桂馬を外した後、▲5五桂と急所に一発入ったのが大きく、途中図では先手が優勢になりました。

△9八銀のところでは、△9九銀とより厳しく攻める手が有力だったようで、以下、▲7九玉、△8七桂成、▲同銀引に、△3八金と打つ手が好手で、形勢不明の終盤戦が続くところでした。

途中図から△9九銀に対して、▲9七玉と逃げても先手が優勢でしたが、本譜は▲同玉と取り、決着をつけに行きました。

第6図は、先手玉は受けなし、後手玉には即詰みはない、という局面です。先手は、後手玉に王手の連続で迫りながら、手順に先手玉への詰めろをほどく必要があります。第6図から王手を続けて、10手進んだ局面が第7図です。


第7図以下、実戦の進行は、
▲5六香 △5五桂 (問題図)

 

▲5六香に対して、△6四玉と逃げるのは▲5五銀以下詰むので、銀か桂馬を合駒することになります。△5五銀と合駒をすれば、以下、▲同香、△6四玉となり、後手玉に王手が続かなくなって即詰みはないのですが、銀を使ったことで先手玉への詰めろがほどけるため、先手の勝ちとなります。

よって△5五桂と合駒をしますが、ここに至ってようやく詰み筋に入りました。△5五桂の局面が、問題図です。


【問題図からの詰め手順】
▲5五同香 △同 玉 ▲5六歩 △同 玉 ▲4七金 △5五玉 ▲4六銀 6四玉 ▲5六桂 △7三玉 ▲6四銀 △8二玉 ▲7三銀打 △同 金 ▲同銀成 △同 玉 ▲6四金 △7二玉 ▲7三金打 △6一玉 ▲2一龍 △5一香 ▲6二歩 △5二玉 (途中図)
▲8五角 △同 飛 ▲5三金 △同 玉 ▲5一龍 △4三玉 ▲4一龍 △4二角 ▲4四香 △同 金 ▲同 歩 △3三玉 ▲4三歩成 △2四玉 ▲2一龍 △2三香 ▲2五金 △1三玉 ▲1一龍 △1二銀 ▲1四金 △同 玉 ▲1二龍 △1三銀 ▲1五銀 △同 角 ▲同 歩 △2四玉 ▲2六香 △2五歩 ▲3三角   まで55手詰
  (SeoTsume1.2 探索局面16099703  思考時間43秒)

 

玉が広くて変化が多いため、詰みを読むのが難儀ですが、眠っていた▲2三の龍を活用して詰みます。実戦では、上記手順の7手目の▲4六銀のところで、▲5六歩と打ち、より短い手数で詰ませました。


本局は、後手の佐藤名人の必死の反撃を、先手の渡辺棋王が全力で受け止める展開となり、途中で▲5五桂から反撃に転じた渡辺棋王の勝利となりました。渡辺棋王は王将リーグ戦の星を1勝1敗の五分に戻し、佐藤名人は黒星スタートとなりました。

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