定跡研究室 四間飛車編

2 後手、棒銀の攻め(その1) 2017.8.18

前回に引き続いて、初級者向けに四間飛車の指し方を解説します。

前回では、後手が居玉のまま一直線に棒銀で攻めて来る指し方を解説しました。やはり居玉のまま攻めるのは自陣に欠陥が多く、四間飛車側はタイミング良く▲6五歩と突いて反撃に転じることで、棒銀を撃退することが出来ました。今回は、後手が玉を舟囲いに囲ってから棒銀で攻めて来た場合の四間飛車の指し方を解説します。舟囲いからの棒銀はプロの実戦譜も多く、先頃引退された加藤一二三九段が得意にされています。


初手からの指し手
  ▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛 △3四歩 ▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲7八銀 (第1図)



第1図までは、前回の居玉棒銀と全く同じ手順で、四間飛車の基本形です。△3四歩に対しては▲6六歩と角道を止めて、△8五歩には▲7七角と飛車先を守るのが重要なポイントでした。今回は、第1図から後手は舟囲いを目指します。先手は前回同様、美濃囲いを目指します。


第1図以下の指し手
  △4二玉 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △5二金右 ▲2八玉 △1四歩 ▲1六歩 △5四歩 ▲3八銀 (第2図)



第2図まで長手数進めましたが、難しいところは特にないと思います。後手の居飛車側の囲いを舟囲いと呼びます。舟囲いをベースに、棒銀などの急戦、居飛車穴熊、左美濃、玉頭位取りなど、さまざまな戦型に発展していきます。一方、四間飛車側の囲いは美濃囲いです。角交換を避けながら8筋をきちんと守っているので、安心して玉を美濃囲いに囲えます。一点注意すべきところは、後手が△1四歩と端歩を突いて来たら、先手も▲1六歩と端歩を突くところです。端歩を突くことにより、終盤に▲1七玉と逃げる余地が生じて、玉が詰まされにくくなります。


第2図以下の指し手
  △7四歩 ▲5八金左 △4二銀 ▲4六歩 △5三銀左 ▲5六歩 (第3図)



第3図まで、先手は左の金を5八に上がって美濃囲いを完成させた後、4六と5六の歩を突いて陣形を発展させながら、後手の動きを見ます。一方、後手は左銀を4二から5三まで上がりました。守りの銀が玉からどんどん遠ざかっていくので、最初のうちは奇異に映るかもしれませんが、定跡となっている指し方です。後手は銀が5三に上がることで、将来、先手からの▲6四歩△同歩▲同飛で飛車を捌かれるのを未然に防ぎながら、中央を手厚く守っています。第3図の後手の陣形は、1970年に現役A級在位のまま36歳の若さで急死した山田道美九段が考案した山田定跡の基本形でもあります。


第3図以下の指し手
  △7三銀 ▲4七金 △8四銀 ▲6五歩 (第4図)



後手が棒銀で攻めてきたのに対し、先手は▲4七金で高美濃囲いにした後、▲6五歩と突いて角交換を迫ります。棒銀で攻められた瞬間に▲6五歩とタイミング良く突くのは、前回の居玉棒銀のときと同じ指し方です。今回は後手の陣形が舟囲いでしっかりとしており、前回のように簡単に有利にすることは出来ませんが、今回も▲6五歩は四間飛車の反撃の切り札となる期待の一手です。

なお、少し難しい話をしますと、▲4七金に代えて▲3六歩とした方が先手陣の形が良くて、この後の変化を考慮すると少し優っているのではないかと思いましたが、▲3六歩の場合は角交換後に△7九角と打たれる変化(正しく対応すれば先手が良くなるのですが)への対応に少し高度な技術が必要なため、分かりやすい▲4七金の方を本手順としました。


第4図以下の指し手
  △7七角成 ▲同 銀 △7五歩 ▲6六角 (第5図)



第4図では、△7七角成と角交換する代わりに、単に△7五歩と突く手も有力です。この変化については次回、解説します。

本譜は△7七角成と角交換した後に、△7五歩で棒銀の活用を狙ってきました。△7五歩に▲同歩と取ってしまうのは、以下、△同銀、▲7六歩に銀を逃げずに△8六歩と突かれて、先手が不利となってしまいます。そこで、第5図のように▲6六角と自陣角を打ちます。前回も解説したように、5五、6六、4六の3点は「黄金の三角地帯」で、好点の角となることが多いです。


第5図以下の指し手
  △7六歩 ▲同 銀 △4四角 ▲同 角 △同 歩 (第6図)



第5図では、▲1一角成を受けないといけませんが、△4四歩や△4四角と受けるのは▲7五歩と歩を取られて、後続の攻めがなくなってしまいます。そこで、先に△7六歩と取り込んでから▲同銀に△4四角で角を合わせて受けました。本譜の△4四角に代えて△4四歩と受けるのは、▲5五歩と突くのが味の良い一手となります。

さて、第6図では、後手陣の急所はどこでしょうか?


第6図以下の指し手
  ▲5五歩 △同 歩 ▲5四歩 △同 銀 ▲7一角 △7二飛 ▲4四角成 (第7図)



▲5五歩が手筋の一手です。△同歩に▲5四歩と打ち捨ててから、▲7一角と飛車取りに角を打ち込んで▲4四角成として、好位置に馬を作りました。第7図では、▲4四の馬で△5四銀と△1一香の両取りとなっています。後手も7六の銀を取ることが出来ますが、この取り合いはどうなるでしょうか。


第7図以下の指し手
  △7六飛 ▲5四馬 △4三銀 ▲7七歩 △7四飛 ▲5五馬 (第8図)



第7図から△4三銀と銀取りを受ける手に対しては、以下▲1一馬、△7六飛、▲7七香として、後手の飛車を捕獲することが出来て先手優勢となります。よって「両取り逃げるべからず」と、後手は△7六飛として銀を取りましたが、▲5四馬と王手で銀を取り返した直後に、一旦▲7七歩で飛車の侵入を防いでから▲5五馬とした手が、1一と9一の香車の両取りとなっていて、四間飛車側が優勢です。

今回も▲6五歩のカウンターと▲6六角の自陣角により、後手の棒銀を撃退することが出来ました。第6図での▲5五歩も、振り飛車ではよく出てくる手筋の一手です。後手が棒銀で攻めて来た瞬間に、その反動を利用してカウンターを仕掛けていくようにしましょう。今回は内容が少し難しくなってしまいましたが、交換した角の使い方を覚えていただければと思います。

次回は、後手が第4図で△7五歩と突いてくる手に対する、四間飛車側の指し方を解説します。

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