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今週の詰み筋 (連載 Vol.17) 2018.1.6

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

今週は年末年始で公式戦がなかったので、1月4日に行われた第8回上州将棋祭りの新春スペシャル対局 佐藤天彦名人vs行方尚史八段戦をご紹介します。

初手より▲7六歩△8四歩▲6八銀から相矢倉模様のスタートとなり、第1図。

お互いに米長流の急戦策を含みに駒組を進めましたが、第1図から▲6六銀はいつでも△6五歩で銀を追い返われてしまうので指しにくいですし、▲4五桂の単騎攻めも△4二銀と引かれた後に△4四歩から桂馬を取られて無理筋です。▲4五歩と位を取って相手の矢倉囲いを阻止する指し方は考えられますが、力戦調になり持ち時間の短い将棋では指しにくい。ということで、▲6六歩から持久戦に進みました。




第1図以下、実戦の進行は、
▲6六歩 △4四歩 ▲7九角 △3一角 ▲6七金 △4三金左 (途中図) ▲6八角 △3二玉 ▲7九玉 △8一飛 (第2図)

 

途中図の△4三金左が、行方八段の工夫の一手です。△4三金右と矢倉に囲って先後同型に進むのが普通の指し方で、昭和の時代から数多くの実戦例があります。△4三金左の意図としては、玉の囲いをあと△3二玉の一手で済ませて、早めに△6五歩から先攻することであり、積極的な指し方と言えます。


局面は進んで第3図。後手の行方八段が当初の狙いどおり、△6五歩▲同歩△7五歩として攻勢をかけたところです。

第3図は、先手の方針が分かれるところです。▲6六銀と上がり一旦は受けに回る指し方もありますが、持ち時間の短い将棋で受け一方になるのは危険と見たのか、佐藤名人は攻め合いを目指しました。



第3図以下、実戦の進行は、
▲4五歩 △同 歩 ▲3五歩 △7六歩 ▲同 金 △7四銀 ▲4五桂 △4四銀 ▲2四歩 (途中図) △同 歩 ▲2二歩 △同 角 ▲2三歩 △同 玉 ▲2五歩 (第4図)

 

後手は△7四銀と活用して攻めに厚みを加えましたが、先手は▲4五桂と跳ねた後、▲2四歩(途中図)から始まる持ち駒の歩を駆使した一連の手筋が、後手の早囲いの弱点を衝いた厳しい反撃でした。先手の7九玉が後手の攻め駒から遠いのに対して、後手の3二玉は先手の2筋攻めの直撃を受けた格好です。

第4図の▲2五歩が継ぎ歩の手筋で、△同歩に▲3六銀と遊び銀を活用しました。歩の手筋が参考になります。佐藤名人の玉の堅さを生かした反撃が上手く決まりました。行方八段は角が攻めに働かないばかりか、先手の攻撃目標になってしまっているのが辛いところです。


局面は進んで、第5図。後手はようやく、4五の桂馬を銀で取り切ったところです。2二の角の利きも通ったので、局面が落ち着けば桂得が生きてきそうなところですが。。



第5図以下、実戦の進行は、
▲2三歩 △4四角 ▲3四銀 △同 銀 ▲4五歩 (途中図) △3三角 ▲4四金 (第6図)

 

▲2三歩が、またもや歩の叩きの手筋でした。△同玉は▲3四銀でそれまでなので、△4四角とかわしましたが、途中図の▲4五歩がまたまた歩の手筋です。本局でいったい何度目の歩の手筋か、というところですが、いずれの手も後手玉や角の弱点を衝く厳しい手でした。

途中図の▲4五歩に△同銀なら▲3五金で角銀両取りですし、▲4五歩に△6二角なら▲2二歩成ですので、やむなく△3三角と逃げましたが▲4四金(第6図)とたたみかけて、先手の攻めは切れなくなりました。先手優勢です。


さて、局面は最終盤となり、問題図です。先手が▲3五歩と打った手に対して、後手が7三の桂馬を△6五桂と跳ねたところです。△6五桂は7七の銀取りだけでなく、4六の角で8二の飛車取りにもなっています。一見すると、先手のピンチに見えますが、実は直前の▲3五歩がさりげなく後手玉に対する詰めろになっていたのでした。3五の歩を拠点にした詰み手順があります。



【問題図からの詰め手順】
▲5二飛成 △同 歩 ▲2三銀 △同 銀 ▲同歩成 △同 玉 ▲3四銀 △3二玉 ▲4三金 △2二玉 ▲3三金 △2一玉 ▲2二銀 △1二玉 ▲2三金 まで15手詰
  (SeoTsume1.2 探索局面62588  思考時間0秒)



初手▲5二飛成で金を入手した後、▲2三銀と打ち込んで清算します。手順中7手目の▲3四銀で詰み形となります。もし△2四玉と上に逃げたら、▲2三金までの1手詰です。7一の馬が遠く3五に地点に利いていて、玉の上部脱出を押さえています。


本局は、行方八段の早囲いの趣向に対して、佐藤名人の持ち歩の手筋を駆使した反撃が印象的でした。

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