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今週の詰み筋 (連載 Vol.18) 2018.1.20

今回は、1月16日に行われた第89期棋聖戦二次予選丸山忠久九段vs佐々木慎六段戦をご紹介します。

この対局は、終盤で超難解な詰みの局面が出現しましたので、その局面を重点的に取り上げることにします。

序盤は、後手の佐々木六段がゴキゲン中飛車を採用したのに対して、先手の丸山九段は角を交換してから▲9六歩と端歩を突く、本家本元の「丸山ワクチン」で対抗しました。

第1図は、後手が飛車を2筋に転換した後、△2四歩▲同歩△同銀と仕掛けて、棒銀で戦いを起こしたところです。ここから丸山九段が反撃を開始しました。



第1図以下、実戦の進行は、
▲2四歩 △同 飛 ▲1五角 (途中1図) △2七歩 ▲同 飛 △2六歩 ▲2八飛 △2三飛 ▲3七桂 (途中2図) △1四歩 ▲3三角成 △同 飛 ▲2五桂(第2図)



▲2四歩と打ち捨てた後、途中1図の▲1五角打が丸山九段の狙いの一手です。対して△2三飛と引くと、▲3三角成、△同飛、▲2五飛で二枚替えをしながら飛車を捌いて、先手有利となります。

そこで、佐々木六段は持ち駒の歩を2枚、相手の飛車の頭に連打してから△2三飛と引きましたが、先手は▲3七桂と銀取りに跳ねて、追及の手を緩めません。

途中2図で△1四銀と銀をかわすと、▲2六角と急所の歩を払って先手有利になります。そこで、後手は△1四歩と角取りに歩を突きましたが、▲3三角成以下、やはり角と銀桂の2枚替えとなり、先手の丸山九段が指しやすい形勢となりました。(第2図)



第2図から一気に終盤戦に突入すると思いきや、局面は第2次の駒組みへと移行し、持久戦の様相を呈して行きました。


局面を一気に飛ばして、第3図。お互いの玉が詰むや詰まざるやというような、緊迫した終盤戦です。



第3図以下、実戦の進行は、
▲7三金 △同 飛 ▲同銀成 △同 銀 ▲同 竜 △同 玉 ▲5三飛 (第4図)

 

第3図では、先手玉に詰めろがかかっています。第3図から例えば▲9一龍とすると、
  △7八角成 ▲同 銀 △6六馬 ▲7七香 △7九銀
以下、少し手数は長いですが、先手玉は詰まされてしまいます。

そこで本譜は、▲7三金と打ち込んでから、第4図での王手馬取りをかけて、先手玉の詰めろを解消しにいきました。しかし結果として、後手に持ち駒をたくさん渡してしまい、混戦になってしまいました。

実は第3図では、先手に明快な勝ち筋がありました。それは、第3図で▲6四金と打つ手です。(参考図)

▲6四金は、次に▲7三金打以下の詰めろであると同時に、先ほどの先手玉への△7八角成以下の詰み筋を消した(6三飛の縦方向の利きを塞いでいる)手で、「詰めろ逃れの詰めろ」になっています。▲6四金は6三の飛車取りにもなっていますし、もし△6四同飛と取れば▲7三金打以下の簡単な詰みがありますので、後手に適当な受けがありません。

本譜は▲6四金(参考図)を逃して、勝負の行方はまったく分からなくなっていきました。


第4図以下、先手は手順を尽くして後手玉に必至をかけた局面が、問題図です。後手玉に受けはありませんので、後手が勝つには、先手玉を即詰みに討ち取る以外にありません。

後手は持ち駒を豊富に持っていますが、5五龍の守りがとても強力です。下手に王手を続けると上部に逃がしてしまいそうなので、即詰みは難しそうに見えますが、どうでしょうか。



【問題図からの詰め手順】
△7八角成 ▲同 玉 △6八金 ▲同 玉 △5六桂 ▲同 龍 △7九銀 ▲同 玉 △8七桂 ▲6九玉 △8九飛 ▲5八玉 △4九銀 ▲4七玉 △2九角 ▲5七玉 △5九飛成 ▲5八歩 △4七金 ▲同 龍 △同角成 ▲同 玉 △5八銀不成 ▲5六玉 △6七銀成 ▲6五玉 △5四銀 ▲7四玉 △6三銀 ▲同 玉 △5三飛 ▲6四玉 △5五龍 ▲7四玉 △6三金 ▲8四玉 △5四飛 まで37手詰
  (SeoTsume1.2 探索局面25025282  思考時間1分7秒)



手順中、5手目に△5六桂の捨て駒で退路封鎖をして、先手玉の上部への遁走を一旦防いでおくのがポイントです。

途中の変化手順が非常に難しく、特に初手△7八角成に対する▲同銀の変化が難解です。本譜はその手順へと進みました。


問題図以下、実戦の進行は、
△7八角成 ▲同 銀 △7九銀 ▲同 玉 △6七桂 ▲同 銀 △8七桂 ▲6八玉 (途中図) △7九角 ▲5八玉 (第5図)

 

途中図の局面までは、即詰みのコースに入っていたのですが、途中図での△7九角が痛恨の敗着となってしまいました。第5図の局面に至っては即詰みがなく、以下王手を続けましたが詰まず、後手の投了となりました。

途中図では、△7九角に代えて、△5六桂が正解でした。△5六桂以下は、以下の手順で即詰みです。

【途中図からの詰め手順】
△5六桂 ▲5七玉 △3七飛 ▲4七桂 △同飛成 ▲同 玉 △2九角 ▲3八銀 △4八金 ▲5六玉 △3八角成 ▲5七玉 △4七馬 ▲6八玉 △7九銀 ▲7七玉 △8八銀打 ▲8七玉 △7七金 ▲9八玉 △9九銀成 ▲同 玉 △8八金 まで23手詰

先手の2五桂と3五歩が、先手玉の上部脱出を阻む邪魔駒となっています。


初手の△7八角成に対する、▲同玉、▲同銀、いずれの変化も複雑で難解ですが、どちらの変化も△5六桂の退路封鎖が決め手となりました。秒読みの限られた時間内で、これらの変化を全て読み切って正確に詰ますのは、人間にとっては至難の業と思われます。

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