両者ともに一次予選を突破しての対局です。先手の里見女流初段は振り飛車党で、関西所属の若手ホープです。後手の竹俣女流初段は居飛車党で、早稲田大学政治経済学部に在学中、最近はテレビのクイズ番組「東大王」に芸能人チームの一員としてレギュラー出演して、その知識の豊富さで多才ぶりを発揮されており、まさに才色兼備と言えます。
戦型は、里見女流初段の先手中飛車に対して、竹俣女流初段は最近流行の角道を開けない左美濃で対抗しました。角道をなかなか開けないことで、先手から▲５四歩や▲４五銀で戦いを起こされるのを避けて、持久戦になりました。
第１図からは、先手が▲６八飛と四間飛車に振り直して、６筋からの攻撃を目指したのに対して、後手は△２四角と上がり、角の利きで先手の攻めを牽制する形に進行しました。
局面は進んで、第２図。先手は歩を２枚得していますが自陣の金銀がバラバラなのに対し、後手は左美濃の堅陣で、形勢のバランスは取れているようです。
第２図以下、実戦の進行は、
▲４七飛 △６六歩 ▲同 角 △５五歩 （途中図） ▲７七桂 △８七飛成 ▲５五銀 △７六龍 （第３図）
４五の位を生かして後手の左美濃を直接攻撃することを狙った▲４七飛に対し、△６六歩と突きだしたのが好手でした。△６六歩は、先手の角を近づけることで当たりを強くしたのと同時に、８五飛の横利きを通した手です。
途中図の△５五歩によって先手の５六銀の進退が極まった形になり、やむなく▲７七桂としましたが、後手は飛車を成り込むことに成功しました。
第３図の△７六龍では、△８九龍と金取りに入って、龍を敵陣で使う手も有力でした。本譜は先手の角銀の動きを龍で牽制する手段を選択しました。
局面は進み、第４図は５筋で銀交換が行われた局面です。
第４図以下、実戦の進行は、
△５四銀 ▲９一角成 △４四角 ▲６七金 △８七龍 （途中図） ▲６五桂 △同 銀 ▲４三歩 △同 金 ▲６四馬 （第５図）
第４図では、局後の竹俣さんの感想にあったように、△５四銀と自陣に投入したのは勿体なかったです。代わりの手として、△４六銀と飛角両取りに打って攻め合う手が有力だったようです。実戦的には、４四の拠点の歩に加え２筋にも嫌味がついているため、駒を渡しにくかったのだと思われます。
本譜、後手は４筋の拠点を角で払うことが出来ましたが、途中図から第５図まで、手順に馬を６四の急所に引き付けました。第５図では、６五の銀を助けるには、桂馬を５三に投入するしかなく、先手が優勢になりました。このあたりは、里見さんの攻める振り飛車党らしい手慣れた指し回しが印象的です。
そして迎えた第６図。先手は▲５一角、後手は△５八銀で、それぞれ持ち駒を敵陣に打ち込んで、寄せ合いの終盤戦に突入しました。形勢は依然として、先手がリードを保っていますが。。
第６図以下、実戦の進行は、
▲４三歩 △同金引 ▲５五桂 △４七銀不成 ▲同 銀 △６七龍 （途中図） ▲４三桂成 △同 金 ▲４四香 △２五飛（第７図）
第６図では、▲７七金（△４七銀成、▲８七金）もしくは▲５七金（△４七銀成、▲同金左）として、自陣に手を入れる手段が有力だったようです。
実戦では、先手は第６図から攻め合いを目指しましたが、途中図まで駒損になってしまったのが大きく、形勢は混沌としてきました。
第７図の△２五飛の王手が、先手が歩の合駒が出来ないのを見越した攻防の好打でした。先手は持駒の金か銀を合駒に使わざるを得ず、戦力不足となってしまいました。
第７図から１０手ほど進んだ局面が、今週の問題図です。
【問題図からの詰め手順】
△２七飛成 ▲同 金 △３九銀 ▲１八玉 △１七香 ▲同 玉 △２五桂 ▲１八玉 △１七金 ▲同 桂 （途中図） △２八金 ▲同 金 △同銀成 ▲同 玉 △３七桂成 ▲同 玉 △４六角 ▲３八玉 △３七金 ▲３九玉 △５七角成 ▲２九玉 △４七馬 ▲１八玉 △５八龍 まで２５手詰
（SeoTsume1.2 探索局面174105 思考時間0秒）
問題図から、△２七飛成と捨てて金を入手後、豊富な持駒を生かして、手筋の連続で詰みます。実戦では、詰手順中の３手目△３九銀に対して▲同玉と取り、△４九金以下の手順で即詰みとなりました。
本局は、形勢不利になった後、辛抱を重ねてからの△２五飛が逆転の一打となりました。竹俣女流初段は２次予選を突破して、自身初となる本戦進出を決めました。